経済産業省によって、約束手形の利用が廃止されることが発表されたのをご存じでしょうか。
2026年頃には約束手形が利用できなくなることから、支払いの際に活用していた多くの現場から戸惑いの声が挙がっている状況です。
実際、本ページをご覧の方の中にも、約束手形の廃止に困惑している方も多いでしょう。そんな方におすすめしたいのが代替案となる「でんさい」です。
そこで、今回は約束手形が廃止に至る背景や、代替案となるでんさいについて詳しくご紹介します。
目次
約束手形が廃止に至った背景
約束手形が廃止となる背景には、受取人側の負担の課題があります。約束手形は、有価証券のことであり、いつまでに支払うのかを約束するために発行されます。とはいえ、小切手とは異なり発行された約束手形を銀行に持っていても現金化できないのが特徴です。
また、約束手形は現金化までに100日前後の日数がかかることが多く、「売ったのに入金がない」といった状況が長く続きます。そのうえ、利息及び割引料なども、約束手形の受取人が負担することが多く、発行する側が有利な状況に陥っていることが問題視されていました。
上記の状況が背景にあることから、経済産業省は2021年に約束手形の利用廃止を発表したのです。
約束手形が廃止されるとどうなるのか
約束手形が廃止されると、これまで不利な立場にあった受取人と、約束手形を発行していた側の関係性が変化します。まず、受取人は支払代金を待つ必要がなくなり、約束手形のやりとりでかかっていた手数料や利息の負担もなくなります。
ただ、約束手形の発行側は、資金繰りが悪くなっても約束手形が使えなくなることから、支払い期日を相手企業に待ってもらうことができません。また、長年約束手形を利用していた現場としては、支払い方法や支払い
サイトなど、金銭に関わることの全般を変更しなければならず、対応に追われることとなってしまう可能性があるでしょう。
なお、約束手形が廃止された後は、代金の支払いはできる限り現金にすることや、支払いサイトを60日以内とすることなど、さまざまなルールに沿って対応する必要があります。
約束手形の代替案「でんさい」について
約束手形を利用していた企業に向けて、経済産業省が推奨している代替案が「でんさい」です。でんさいは電子記録債券のことであり、徐々に導入が進んでいるサービスです。
約束手形とは異なり、紙でのやりとりがないため、「紛失」「盗難」などの心配がありません。必要な情報に簡単にアクセスできるため、必要なデータを探しやすく見つけやすいといったメリットもあります。
また、支払い期日を迎えると自動で決済が行われることから、当日になってバタバタと入金手続きを行う必要がありません。
でんさいを導入する際の注意点
企業間取引において便利な存在であるでんさいですが、導入する際にはいくつか注意点があります。
でんさいの導入を考えている方は、以下の注意点を把握したうえで検討してみてください。
利用料がかかる
でんさいを導入するにあたって知っておきたいのが利用料が発生する点です。でんさいは有料サービスとなるため、あらかじめ把握しておきましょう。しかし、でんさいの利用料金は、窓口となる金融機関によって異なります。
費用の目安は、発生記録手数料が1件あたり数百円程度、入金手数料は無料、もしくは数百円程度です。具体的な金額を知りたい方は、窓口金融機関に問い合わせて確認しておきましょう。
サービスの提供時間が定められている
でんさいは、24時間営業ではないため、サービス提供時間内に記録請求の受付を行う必要があります。でんさいのサービス提供時間は銀行が営業する日の9時から15時までとなっています。
しかし、窓口金融機関によっては記録請求の受付時間が上記の時間よりも早い場合があるため注意してください。逆に、上記の時間以外であっても、対応してもらえる窓口金融機関もあるため、利用先の金融機関に確認しておくと安心です。
でんさいの記録内容の変更は関係者の承諾が必要
事情により、でんさいの記録内容を変更したいときには、利害関係者全員の承諾が必要となります。基本的には、企業間取引であれば責任者が2名であることが多いため承諾の難易度は高くないものの、仮に3名以上となると承諾を得ることが難しくなる傾向にあります。
おわりに
これまで、約束手形を利用していた企業にとって、廃止の方針の決定は困惑する事態です。支払いサイトや支払い方法などの変更を余儀なくされるため、対応に追われることとなる可能性もあるでしょう。
しかし、代替案となる「でんさい」を導入すれば、従来のスタイルから大きく変わることなく支払い関連の対応が進められるようになります。
でんさいの導入を検討している方は、今回ご紹介した注意点も踏まえたうえで現場の関係者と相談してみてください。